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字のないはがき(眠る杯)、向田邦子 [日本文学・本棚]


眠る盃

眠る盃

  • 作者: 向田 邦子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1979/10
  • メディア: 単行本



盆休みに、東京都内の大学で国文学を教えている先輩と会った。
二人とも大酒飲みで、この日も北総のとある店で一緒に深酒をすることになったが、店があくまでまだ時間があったので、一緒に書店へ行き、いろいろなジャンルの本の背表紙をみては、その内容について話し合った。これが非常に楽しい一時だったのは、勉強や学問については、この先輩から受けた影響が非常に大きかったからだ。

向田邦子の話になったとき、先輩から貴重な話を聞いた。ひとつは、彼女の著作の「字のないはがき」が、随分前から中学校の教科書に載っていること、これは知らなかった。「字のないはがき」は、読んだことがあるが、どの短編集に入っていたのか思い出せなかったので、ネットで調べてみると、「眠る杯」に入っていたようだ。そして、もうひとつは、向田邦子の著作は、文書も素敵だが、脚本家だけあって、彼女の作品を映像化するととても映えること。彼女の全ての作品がそうではないのかもしれないが、この「字のないはがき」を事例に、まだよく字の書けない妹が、疎開先から出す、最初は「大きなO」のかかれた葉書が、だんだん「ちいさなO」になり、ついには、「X」のはがきになっていく、というこの流れを映像化すると効果的だという先輩の説明はとてもわかりやすかった。

今年の終戦記念日は、周囲を取り巻く国々との関係も含めて落ち着かないことが多かったが、戦時中の疎開について書かれたこの本を思い出して、私自身、少し頭を冷やせたような落ち着いた気持ちになった。

krause
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コメント 1

まっきー☆

本について語り合える先輩がいらっしゃるだなんて・・・とてもうらやましいです! 向田邦子作品は、興味があるけれども未だ手つかず。 一度読んでみたいと思います。
by まっきー☆ (2012-08-29 19:40)