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物語オランダ人 [その他・本棚]


物語 オランダ人 (文春新書)

物語 オランダ人 (文春新書)

  • 作者: 倉部 誠
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2001/07
  • メディア: 新書


著者は、「在オランダ日系企業に勤務していた視点」からオランダ人やオランダ社会を述べられていますが、これはEU系企業に勤務する私とは異なる視点なので、とても面白く深く読めました。その多くは「同感!全くそのとおり!」ということばかりでしたが、いくつかについては、著者と私の置かれている立場の違いを感じます。また、私は殆ど日系企業で働いた経験がないので、日本人とオランダ人の仕事に関する考え方の違いが非常に興味深いです。著者の言う「反日感情」についてはナゾですが(一部にはまだあるかも知れませんね)、第二次世界大戦の傷跡を、今でも若い世代を含めた多くのオランダ人に残しているのは事実だと思います。

最後になりましたが、私にとって、オランダ人は一緒に働きやすい人たちです。彼らとは、20年以上一緒に働いていますが、彼らがオランダ人であるということで不愉快な思いをしたことは一度もありません。


タグ:オランダ
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コメント 1

HINAKA

HINAKAです。

Krause様

チョッと、カルチャー?ショックです。
個人的には、全くオランダ人やオランダという国を見た事も触った事も無いのですが、ヨーロッパの中では最も尊敬している国です。
その歴史、「世界は神が作りたもうたが、オランダの大地はオランダ人が作った!」という、国土干拓の気概。新教徒革命の旗頭で、当時の最強国スペインとの血みどろの歴史、同時に右手で握手し左手に剣を隠し持つ間柄の、イギリスとの虚々実々の、対スペイン戦における外交取り引き。

商売上手の(相手の弱みに付け込む)オランダVS外交でのウソはウソではなく、政治取り引きと嘯いく、2枚どころか多重舌のイギリス。
間に立ったフランスやドイツが、また対外折衝においては、駆け引きよりも武力!のクセに、妙に腰砕け……まァ、相手から見ればまさに、「狡くて卑怯な、オランダ商人!」なのでしょうが。
商業史上、画期的なギルド制も、他から見れば専属独占商法。利益、独り占め!

例によって、大きくドイツ系とフランス系に分かれる、欧州特有の他民族?国家。
何度かの国家分断と、他国に占領支配の後に、世界史上悪名高い?東インド会社による、大植民地政策。この事から始まる、日本の江戸時代唯一の欧州交易国という点は、個人的には余り評価していません。

その真価は第2次大戦後の、植民地独立の引き際にあります。
確かに、対インドネシア独立戦争は不幸でしたが、これには色々と歪みもあり、インドネシア側に残留日本兵が多く義勇兵として、参加した事などもあって、本当に色々不幸だったと思います。
ただ、この教訓を生かした、他の多くの植民地に対する、引き際の良さはそのインフラの整備から、その維持管理に必要な教育の制度、独立したとは言え政治など未経験な新政府に、裏から顧問として支えながら、決して表に出なかった事。

恐らく第2次大戦後、植民地独立の際に、もっとも円満に植民地政策から手を引いた(名を捨て、実を取る!政治的支配権よりも経済的な関係強化!!)、インドネシアを別にすれば、恐らく一番元植民地から恨まれていない国でしょう。
その後、大植民地国家から欧州の小国になりながらも、前にも申し上げた「ベネルクス同盟」から、ECCを経てEUへと、欧州大連合の基礎を作りながら、イギリスやドイツの大国が大きな顔して出て来ると、静かに身を引く?潔さ。

さらに国内では、というかこれが一番興味深いのですが、前国王時代に日本と同く直系男子の長子存続制が問題となり、長女の現女王を次の王として認めるかどうかで、国を2分する大論争。
遂に議会で、この件に対する「国民投票法」が成立して(つまり議会では決められなった!)、初の国民投票が行われ、8割を超える投票率と9割を超える賛成票を持って、国王の長子が女性であっても、次期国王として即位できるという法案が、承認され改めて議会で成立したという謂われ。

そして2度目の国民投票は「国王の伴侶に前大戦(第2次世界大戦)の敵国人(敗戦国人)であっても、認められるか?」これは、現女王夫君が何と敵も敵、不倶戴天のドイツ人だった事から起こった、これも大論争です。
こう言っちゃァなんですが、何も選りにも選って、そんな難しい人を選ばなくても……と思うのは素人の浅はかさ、これからの欧州協調時代(東西冷戦時です)には、当時の西ドイツの融和は、経済国オランダとしては政治的にも必至な関係。

まァ、それを最初から狙ったのか、結果としてそっちを選んだのかは分かりませんが、これも高投票率と高得票を持って、賛成!で成立し現ベアトリアス女王家が、ある訳です。
女王は、特別国家公務員で王宮には住まず(今もそうだと思いますが)、毎日王宮に出勤されており、それぞれの王子王女達も皇太子以外は、民間企業かNPO団体に就職もしくは参加、されているハズです。

その解放された王室の雰囲気と、戦前からの交流でとりわけ日本の皇室との関係が深いそうです。
その為に、皇太子御一家が皇太子妃の転地療養を兼ねて、そのオランダ王室の誘いに応じて、休暇を過ごされたところ、例の天皇陛下の御発言があって、却って日本国内では騒ぎになった!と言う、どちらにとっても後味の悪い、結果となった事は御承知の通りです。

オランダ王室は、欧州でももっとも開かれた王室して知られ、前国王などは一人で普通の通勤電車に乗って、たまたま隣りに居合わせた日本外交官を驚かせたそうです。
また、確か現女王の御長女が〈一人で(たぶん……)〉近所のマーケットに、もちろん歩いて買いものに出掛けたところ、そうとは知らぬ暴漢の引ったくりに合う!と言う事件が起きましたが、この時王女の声に反応して、周囲の市民が折り重なるようにして、暴漢を取り押さえ、無事に王女のバックは取り戻され、犯人は警察に引き渡されました。

が、その時警察官が、被害者である王女の名前を聞いた頃に、ようやく周囲の市民も引ったくりの被害者が、王女である事に気付いたそうです。
警察官は、二度その身元を確かめたという、有名なエピソードがあります。

もちろんだからと言って、王室の警護担当者が、責任を問われるなどという事は、ありません。
むしろ、王女とは知らずに助けた市民こそ、「我が尊敬するオランダ国民です」という女王のコメントが、小さく報道された事をの方を、当事者達は喜んだと言われています。
「こそ泥を捕まえるぐらい当たり前」だからだ、そうですが……。

と言う訳で非常に、尊敬と崇拝を持っているのですが、第二次大戦での、日本軍及び関係者のインドネシア等での蛮行が、未だに反日感情を抱かせているとしたら、残念の一言に尽きます。
(だからと言って、全面的に肯定とは言えません。人種や犯罪の問題等、オランダ国内の特に治安と人権問題は、根が複雑なだけに、かなり気になります)

毎度の長広舌、お許し下さい。


by HINAKA (2010-05-25 17:47)